信じてる。



天敵企画様提出作品


いきなりだが、俺には好きなやつがいる。

その相手というのは、まさかの高校の担任の先生。
しかも、男。

田島っていう先生で、確か今年で28。
独身だが、容姿はめちゃくちゃ良い。
俺が通うのは男子高だから、女子の声は聞いたことはないが、女子にもすげぇモテると思う。
教科は数学で、説明が分かりやすいのでも有名だ。


――良い奴そうだけど、こんなヤツをまだ好きな理由がよく分からない。

だって……


「おい、何故遅刻した」

「…べつに」

「べつに、とは何だ?理由を聞いているんだ、答えろ」

遅刻してしまった俺は、授業中というにも関わらず、田島に説教を受けている。

しかもかなりのきつーいやつ。
周りの生徒らは、また始まったと言わんばかりに自習をしたりしている。

こんなアホらしい説教は、何故か俺だけにされる。
かなり嫌われているらしい。

なのに俺はアホだから、はいはいと頷いとけば良いところをすぐに買ってしまう。

「べつに」

さっきと同じ返事をする。
周りからくすくすと笑い声が聞こえた。

「…昼休み、指導室へ来い。単位が欲しかったらな」

田島は、授業を始める、と告げて教壇へと戻る。

俺は席に着いて、一呼吸。
不真面目なもんだから、筆箱でさえも出さずに寝た。

あとで教科書で叩かれるのは言うまでもない。


「お前指導室行くんかよ?」

「おぅ。単位は欲しい」

昼休みになって立ち上がったら、横の友達に声をかけられた。

先に言っておくが、俺が男の教師を好きというのは誰もしらない。

だから口々に皆、気を付けてとか無事に帰って来いよとか。
まさしく鬼ヶ島に行く桃太郎気分だ。


「失礼しまーす」

がらがらっと古くさい扉を開けると、ソファに田島がいた。

「来たのか。さすがに単位がほしいか」

といって、くすっと嫌みったらしい笑みをした。

田島のその勝ち誇ったような顔に、なんか悔しくて言い返してしまった。

「お前が担任じゃなきゃ良かったな〜」


すると笑みは消え失せ、いつもより増した低音な声が聞こえた。

「お前とは何だ。目上の人には敬意を持って話せ」

「は?誰がお前なんかに…んんっ」

…――――えっ??


「ばーか」

完璧に勝ち誇った顔をされて、先に出ていかれた。


俺、もしかして田島にキスされた…?


進路指導室に呼び出されてそのまま屋上へ向かった。
もちろん次の授業はサボる気満々で。

だれもいない屋上はかなり良い居心地だ。
それにも関わらず、あの田島のことを考えてしまう。


そういえばあの時から好きだった。

俺が生徒を殴ったという冤罪のせいで、退学処分下されそうになったときに必死に校長に訴えかけてくれたのはあの田島だった。

『彼はこんな真似をする生徒ではありません。僕は彼を信じます』

そう言い切った田島の背中に俺は惚れたんだ。

先生と生徒だとか、男と男だとかそんなの知らない。

ただ田島という1人の人間に恋をした。

「さっきのキス…」

どういう意味だったんだろうか、なんて解決もできず時間が過ぎていった。


「はあ?休み?」

「おうよ。風邪らしいぜ」

次の日、田島に会うのに躊躇しながらも学校に行くと田島は休みらしい。

しかしそれが意外にも長く、田島が学校に現れたのはキス事件から4日後の時だった。

最初は長く会っていなかったからか姿を見た時はドキリとしたものの、向こうは何もなかったかのように接してくる(喧嘩を売ってくる)ため、俺も平然を装った。


ある日のことだった。

「お前はなあ」

「だから何なんだよ!」

担任の田島とまたあの指導室で言い合いになった。

「お前のことは信じてたのに」

「…っ!」

田島は特に深い意味もなく呟いたことだろう。
しかし俺にとっては心をえぐるような気持ちになった。

『信じてたのに』

田島の言葉が頭にこだまする。
甘えてたんだろうな、俺は。

何も言い返さない俺に異変を感じたのか、田島は下を向いたままの俺をのぞき込んだ。

「…どうかしたのか?」

「…っ」

俺は指導室から飛び出て全速力で走った。

後ろから田島の声が聞こえたが、振り向かなかった。


たどり着いたのは屋上だった。
切れた息を戻すために深呼吸をする。

「なんなんだよ、もう…」

信じてくれていた田島にいつも最低なことをしていたのは俺だった。

言い合いになる原因を作っていたのは俺だった。

だけど俺はあいつを、田島を、
「好きなのに…ばっかじゃねえの」


「それは…本当か?」

俺は言葉のした方へ振り向くと、

後ろには田島が立っていた。

あまりにも急すぎて声が出なかった。
するとそれが分かったかのように田島が口を開く。

「お前は…俺が好きなのか?」

そう言われたときに俺はやってしまった、と思った。

どう考えても嘲笑われるに決まっている。

けれど予想を反した行動と言葉だった。

「お前がどんな人を好きでもいい…俺はお前が好きだ」

そうしてぎゅっと抱き締められた。

「なんだよそれぇ…俺だって…」

『好きなんだ』

そう言う前に2度目のキスをしていた――…。


あれから何日か経ってめでたく恋人という関係になった。

「お前との言い合いは楽しかったなあ」

「なんだよ!楽しんでたのかよ!」

「どんどん顔を赤くするお前がかわいくてな」

「はあ!?」


今も俺の顔は真っ赤だろうな…。



end...




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